殺人鬼と宇宙人とうさぎ。

Category Archives: (`・ω・´)オススメ!

ウルトラI LOVE YOU!(2009/アメリカ)


メアリーは真っ赤なブーツが大好きな、少しエキセントリックなクロスワードパズル作家。ある日、イケメンTVカメラマンのスティーブと出会った彼女は、人生が引っくり返るような恋に落ちる。それ以来、仕事で全国を駆け回る彼にしつこく付きまとうように! しかし、彼はメアリーを“イカレちゃん”と嫌がり、避け続ける。エスカレートしていく愛情と奇行に、ますますスティーブの心が離れていく中、アメリカ全土を巻き込む事件が彼女の身に起こり……。

原題:All About Steve

事件のあるところスティーブあり!ということで、事件と愛するスティーブを追ってアメリカ全土を駆け回るメアリーの奇行記とでも言うべき映画で、彼女のトリッキーなキャラクターを受け入れられないことには楽しくないでしょう。
しかもアスペルガー症候群であるがゆえに他者から疎まれたり笑われたり、ちょっといたたまれない心境になる部分が……。

しかしアスペルガー症候群という存在をごくありふれたものとして扱い、同時に彼女らの存在を『個性』とは受け取ってくれない社会へのアンチテーゼを込めつつも、それでいて気軽なコメディに昇華したことは意義のあることだと思う。
(発達障害をバカにしていると受け取る向きもあるでしょうが、個人的にはそういった障害を腫れ物扱いしたり、あるいは『無い』ものとして扱うことの方がどうかなあという考えです。当人がそれを望むのでない限りは。)
ありふれたものとして扱ってるから、作中で「メアリーはアスペルガー症候群です」なんてわざわざ名言されることもありません。

それにしても、人が人に押し付けようとする『ノーマル』の数々のなんと多いことか。
セクシャリティや、髪型や、体型や、服装や、歩き方や、笑い方や泣き方の一つ一つに関するまで金型が用意されていて、その型にはまらない人間は全て不良品とされてしまう。
おまけに不良品はどのように扱ってもよいとされている。

作中でも、危険にさらされたメアリーを案じるどころか更なる追い討ちをかけるような(あるいはからかうような)言葉や行動の数々が散見されるように。
『個性』の人々と『一般』の人々の間が柵で隔てられたシーンもかなり示唆的。

とはいえ現実問題として、やっぱり彼女らは少数派で、その他大勢とは相容れない面もあります。
メアリーがスティーブの側ではなく自分によく似た仲間の元に居ることを選んだように、住み分けという発想も必要なんだと思う。
それは両者の間に柵を建てるという意味じゃなくてね。
自分と違う存在を疎むのではなく自分と同じ存在と出会えたことを喜び、「自分は自分、誰かは誰か」と切り離して考える勇気を持ち、自分は自分であると認める勇気を持ち、自分とは違う存在を認める勇気を持つことが必要なのでしょう。

だからこそこの映画でもメアリーはスティーブではなく他の自分とよく似た仲間達の元に戻ることにしたのだし、私はこのエンドが大好きです。
メアリーが「周りから普通になれ普通になれってせっつかれるからそうしなきゃいけないような気がしてるけど、私自身はべつに普通になりたいわけじゃない」とハッキリ言い切るところもすごくいい。
スティーブが「君はそのまま変わるなよ」と言ってくれたことも。
最初から最後まで一貫したテーマを守り続けた姿勢はあまりに気高く、これがラジー賞?と首を傾げてしまうほど。

誰でも笑えるコメディではないし、ハートフルなラブストーリーでもないけど、アスペルガー症候群の恋愛模様と人生模様を描いた映画として、ぜひ一度観てみてほしい。

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エイリアン 虚空の影(ティム・レボン著)


宇宙貨物船ノストロモ号の惨劇から37年……。鉱石採掘船マリオン号は、地球からはるかに離れた惑星LIV178の上空で軌道を回っていた。ある日、輸送艇サムソン号とデリラ号が、惑星からマリオン号へと緊急発進する。デリラ号では、座席に縛り付けられた鉱夫たちの胸が内側から突き破られ、異様な生物が現れて人間を襲う。パニックに陥った艇はマリオン号に激突、母船は甚大な被害を受けた上に、軌道から外れて徐々に落下していく。大気圏に達して燃えつきるまでの推定期間は約3ヶ月。一方サムソン号は自動操縦で到着するが、乗組員は全員死亡、船内に隔離された4匹の生物は急成長を遂げる。マリオン号の生存者たちと謎の生物の間でにらみ合いが続き、有効な脱出計画も見出せないまま、大気圏まであと数日となった頃、一艘の救命艇が漂着する。中にいたのは、冷凍睡眠中のひとりの女性と一匹の猫。これまでの出来事は、新たな“悪夢”の序章にすぎなかった……。


いろんな心配をよそにストンとまとまった良作でした。
なんとなく、「作者が煮詰めたいところはもっと他にあったのかもしれない」…という思いがよぎったりもしましたが…(特に後半)。
商業の限界と作者の希望の間に齟齬があったのかな…ここは本当はこういう風にしたかったんだけど妥協したんだろうな…とか、いや全く根拠はないんですけど!そう感じられる部分が無くもない。
でもそのおかげでコアなファンじゃなくても十分楽しめるし、オリジナルなSF物語としても読める仕上がりになってると思う。

ゼノモーフ好きとしては彼女ら(彼ら?)の外見の描写がもっとねちっこく詳しい方がハァハァできたのですが、そこは想像におまかせということなのかとてもあっさり。
私はウォーリアー系を想像しながら読んでました。

対決シーンもやや薄味です。
あえて細分化するなら2や4のファンには物足りなくて、1や3のファンならうんうんって頷けるかもしれない。

そんな中でなによりの収穫は成長途中の女王陛下が拝める点!
わりかりしサラッと流された感ありますがそれでもちび女王陛下のセクシーキュートっぷりは十分伝わってきて大興奮でした。
すぐに倒されてしまうのは……喧嘩を売った相手がリプリーさんだったのが悪かった。これは仕方ない。

この流れで誰かエイリアン4のその後とか書いてくれないかな?

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さまざまな迷路(1983/星新一・著)

さまざまな迷路 (新潮文庫)
さまざまな迷路 (新潮文庫)
mobileさまざまな迷路 (新潮文庫)

32編のショートショートが収録されています。
雑多なジャンルの話がおもちゃ箱のように詰まっていて、私的には特にお気に入りな一冊。
とにかくショートショートが読みたい!って人は買って損はない。


重要な任務』はショートドラマに出来そうな、軽快な一本。所属の組織から命じられた重要任務は小箱をA国に運ぶこと。
昇進がかかった仕事に主人公は意気込んで挑むのですが、その道中はトラブル続き。その果てに待ち受ける見事な(ノ∀`)アチャー オチがいっそ心地良い。

うってかわってホラー的な『森の家
強盗を犯した男が逃げ込んだのは、森の中の寂れた小屋。そこには老人が一人、椅子に腰かけて酒を飲んでいた。そして老人のそばには金貨が詰まった箱がある。欲に駆られた強盗は彼を殺害するが……
無限ループとはよいものだ。

質屋に金を借りに来た青年と店主のショートストーリー、『ことのおこり』はぞっとする。短いけどインパクト抜群。

平凡普遍を嫌ってまったく違う顔に整形した男が新たな人生を手にしたまではいいものの、徐々に厄介なトラブルに巻き込まれていく様子を描いた『』。
なんでも売り物にするドライな時勢、この話みたいなことだって将来はありえるのかも?

コーポレーション・ランド』はその名の通り、遊園地のごとし賑やかさを備えた会社と、そこを見学しに来た一人の男の話。
いろいろ出てくる未来的なアイテムのなかに、こそっとポラロイドカメラなんかが紛れてるのが面白い。
思わず笑ってしまう脱力オチが好き。 平和な世界だなあ。

その次の次の『末路』は、それとは真逆の作風。
世の中の人たちが腹に溜め込んでいるちょっとした“不平不満”を代弁するコメンテーターとなった青年が、番組のなかで様々な職種を皮肉った末に手痛いしっぺ返しを食らうお話。
これは手痛い。痛すぎる。なにせ彼は四ヶ月にもわたって、やれ警察は役立たずだの、ホテル業は調子に乗ってるだの、歯医者は糞だの、弁護士はアホだのとあらゆる職業を散々にこき下ろしてきた身。
いざ自分が困った事態に陥っても、助けてくれる人なんかいる訳もなく…
それまで彼を応援していた一般の人々ですらも知らん顔。機械以外はみんな敵の世界で、どう転んでも進んでも暗い道しか見えない。
何度読んでも後味が悪いけど、なんか癖になる。それは多分、私もこの話の“一般人”と同じように、青年を都合のいい道具としか見てないからなんだろうな。

ベターハーフ』は人間以外の生き物――つまり、ライオンとか熊とかカンガルーなんかと結婚できるという、私大歓喜の世界の話。
気になるのは、寿命の問題てどーなってんの、ってとこ。人間への愛情は薬で増幅させてあるみたいだけど、寿命まではどうにもできないのかなぁ。だとしたら寂しいね。
もしこんな世界が実現したら、人間なんて、とてもじゃないけど敵わないだろうなって思う。

公明正大であれば事件加害者への敵討ちが許される時代となった未来をえがいた、その名も『かたきうち』。
ただ犯人を見つけて切り捨てるまでを綴った復讐劇……などではあるはずもなく。著者らしい思わぬ裏設定があるのでした。
主人公はうまくやったけど、敵討ちに失敗する人も多いんだろうねえ、やっぱり。

ホラー好きなら嫌でも期待をかきたてられるであろうタイトル、『』。
ひとけのない山奥に休暇に出掛けた青年が、「わたしは死という概念を完全に捨て去り不死身を手に入れた」……なんて主張する老人と出会っちゃう話。
老人は不死身を証明するために青年に自分を殺させます。はたして、確かに彼は死ななかった。
正確には“意識だけは”死ななかった。
肉体が徐々に朽ちはじめる中、老人はまたしても青年に無茶な頼み事をするのですが……。
ラストまで期待を裏切らないホラーっぷりでぞくぞくさせられました。
星さんの淡々とした文体で腐敗の様子を綴られると妙に恐ろしいのはなぜでしょう。

その練られっぷりに感動すら覚えた『一軒の家
とある無人の集落に一軒だけ残された立派な家屋。そこに住んでいるものは、もちろんいない。
だけどここを訪れた人は家の中で人の声を聞いたり、気配を感じたりする。
次第に呪われた家として噂が広まっていく。だけどそこには意外な真実が……

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ゼロ・グラビティ(2013/アメリカ、イギリス)

ゼロ・グラビティ [DVD]
ゼロ・グラビティ [DVD]
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地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していたメディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。すると、スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探っていく。


IMAXシアターの3D・字幕で見てきました。
劇場が選べるなら(多少遠くても)できるだけスクリーンの大きいところを選ぶとよさげ。
ただし乗り物酔いしやすい人は脱水起こすまで吐き続けるハメになると思います。いや、これ大袈裟でもなんでもなくて。本気でやめといた方がいい。
2DだろうとPCの小さい画面だろうとダメな人は絶対にダメなタイプの作品。
私は酔いはしなかったものの、しばらく平衡感覚が元に戻らなくて椅子から立てませんでしたw

と、言うのも、この映画は体感型アトラクションだから!

リアリティを追求しているわけじゃなくって、細かいところはなあなあに作られてると思う。
まったく知識のない私でも「ん?」となるところが何カ所かありましたので、宇宙科学に詳しい人はツッコミ疲れ起こすかもと思った。

ストーリーだって、あってないようなもの。
爆破で飛散した衛星の欠片によってシャトルを破壊された宇宙飛行士が、なんとか地球に帰ろうと奮闘する話。以上。

そういった特性を鑑みると、極端な話、これからDVDやBDがリリースされてお家で初観賞した人たちがレビューを入れ始めると、現在から★ひとつぶんは評価が下がりそう。
映画館で観てこその一発ネタ的映画であることは否めない、と。

視聴者は時に主人公になり、時に神の目線でもって重力ゼロの世界を“体感”する。
まず言っておくと、これをお家で観るなんてとんでもないですよ!魅力半減なんてもんじゃない。
観よっかなーって考えてる人はすぐに行くべきだし、どうしようって迷ってる人も行くべきだし、レンタルでいいやーとか思ってる人がいたらすぐさま考え直して、やっぱり映画館に行くべき。


公開中の映画なので内容は畳みます。
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ゴースト・スクール(2012/スペイン)

ゴースト・スクール [DVD]
ゴースト・スクール [DVD]
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モデストは学校の教師。幽霊が見えて、話もできる能力のせいで、次々と学校をクビに。そんな中、新しく赴任した学校で、本領発揮のチャンスが。そこでは、5人の不良生徒の亡霊が居座り、学校を荒れさせていたのだ。モデストは、なんとかして彼らを「卒業」させ、学校を元の状態に戻さなければいけない。しかしこの生徒たちには、学校を離れられない事情があり、モデストは生徒たちに協力し、卒業を目指して奮闘していくのだった。

原題:PROMOCION FANTASMA

主人公のモデストは、幽霊が見える特異体質のせいで子供の時分からずっと変人扱いされてきた男。
特にティーンエイジャー時代、パーティーでそうとは知らず幽霊の女の子と踊ってしまい(周りからすれば彼が一人で踊っているようにしか見えない)さんざん笑われた経験は今でもトラウマ。
誰にも理解されない彼は、ずっと心を閉ざしたまま生きてきた。

だけど件の学校でとうとう出会ったのです…始めて自分を肯定してくれる相手に!
それまでどんよりとしてたのが、「あなたの能力は素晴らしいわ。あなたはまともよ」と言ってもらうや否や、急に晴れ晴れとした表情&うきうきした足取りになって町を闊歩するシーンには大いに笑いました。

きっと彼は幽霊が見えること自体がどうこうじゃなく、誰にもわかってもらえないことが辛かったんじゃないかな。
だってそれからは町中にいる幽霊にも自分から進んでコンタクトを取るようになるし。
ずっと死んでいるみたいに生きてきたモデストも、自分の能力を必要とされて始めて、これまでの自分から“卒業”できたのかも。


学校に住み着いている幽霊5人組というのは、妊婦のマリヴィ、本と音楽が好きなアンヘラ、酔っぱらいのピンクフロイド、体育会系のホルヘ、そしてリーダー格のダニー。
全員不良生徒…ということになってますが、女性陣2名は案外素直。
男性陣3名はそれに比べると確かに反抗的ですが、不慮の事故で死んでしまったことと長年の幽霊生活で退屈していじけちゃってるだけって感じに見えます。
ダニーが特にいじけてる。

彼らは80年代に学校で起きた火災によって命を落とし、それからずっと現場となった旧図書室(現在は閉鎖中)に住み着いてるの。
学校の敷地外には出られず、たまに教師や生徒を脅かして憂さ晴らししながら毎日過ごしてるらしい。
そんな中、ホルヘはゴス娘のエルサと出会うのですが、この二人の交流には大いにときめきました(*´`*)
友達も恋人もいないエルサは「生きていても楽しくなんてないし」と言って、ホルヘと一緒になるために自ら命を絶とうとするのですが…。


上で述べたように外に出られない彼ら。
もういい加減に成仏したい…という気持ちもあるようです。
教育委員会の視察を目前に控えた学校としても、彼らにはなんとしても出て行ってもらいたい。

そこでモデストが考えた成仏作戦は、彼らに勉強を教えてここを卒業させること。彼らの未練は高校を卒業出来なかったことだと考えたのですね。
やがて、そのかいあって全員を卒業させることに成功!
…が、何故か誰一人として成仏ならず。

実は本当に必要なのは『5人それぞれの“心残り”を取り除いてやること』だったのです。

マリヴィは彼氏のことが気になっているから、ピンクフロイトはもう一度ディスコで踊りたいから…
そして一番大きな心残りを抱えているのがダニー。それは彼らの死因にも関係する秘密。

正直、油断してたら何度も泣かされてしまった。
けど余韻はとっても爽やかで、リフレッシュしたい時にオススメ。気になったらレンタルして損はないです。
ハリウッドリメイクされるらしいけど、確かにこれはハリウッド向きのノリ!
そっちも早く観たいな~、楽しみ(が、製作がウィル・スミス……また息子ゴリ押しする気じゃないだろうな)。

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ロードサイド・クロス(2010/ジェフリー・ディーヴァー著)

ロードサイド・クロス
ロードサイド・クロス
mobileロードサイド・クロス

陰湿なネットいじめに加担した少女たちが次々に命を狙われた。いじめの被害者だった少年は姿を消した。“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスが少年の行方を追う一方、犯行はエスカレート、ついに死者が出る。犯人は姿を消した少年なのか?だが関係者たちは何か秘密を隠している―。幾重にもめぐらされた欺瞞と嘘を見破りながら、ダンスは少しずつ真相に迫ってゆく。完全犯罪の驚愕すべき全貌へと。


インターネットの普及に伴う匿名性の問題を取り上げた本書には、“ブロガー”の同義語として“エスクリビショニスト(escribitionist)”という近年生まれた造語が登場する。
この言葉は、自己顕示欲の強い人(exhibitionist)と記述(scribe)を合わせてあるのだそうです。
発音が難解だし日本じゃとても流行りそうにはないですが、アメリカではすでに普及している言葉らしい。

他にも「自分や上司や仕事の情報をブログに公開してしまった事が原因で解雇されたこと」を意味する“ドゥース(dooce)”や、「就職面接で以前の上司についてブログに書いた事はありますか?と質問されること」を意味する“プレドゥーシング(pre-doocing)”という言葉も登場。
最近の日本じゃブログよりも、『バカッター』とか揶揄されているTwitterがらみのあれやこれやを思い出す方が身近でしょうか。
ああいう行動も自己顕示欲に突き動かされてのものなのでしょうね。

ということでインターネット社会に突っ込んだミステリです。
よりによって、相手の顔の見えない世界に人のボディランゲージを読み取るのを仕事としているダンスを放り込むなんて、思いきった事をするなあと感心。
とはいえキネシクスは分岐点で光を投げかける街灯の役割を担う程度で、全面に押し出されていると言うほどではなく。
捜査は結構フツーだなって思いました。キネシクスならではの特色が欲しい人には物足りないかも。


現実と虚構の境界線を見失った少年少女の事件…なんて書くと日常からかけ離れているように感じられるかもしれませんが、よく考えてみてください。
たかがネットゲームに月数万、数十万円をつぎ込む人に覚えはありませんか?
話に聞いた事がある、知人に思い当たる人物がいる、あるいは…あなた自身がそうかもしれません。
それはまさに、現実と虚構の境界線を見失っているが故の行動ではないでしょうか?
…なんて偉そうにうそぶく私にも、そう遠くない過去に身に覚えがあったりして。

インターネット中毒な私にとってこの作品のテーマはとても興味深く、最初から最後までダレずに一気に読み進めてしまいました。
こんな辺鄙なサイトを探し出してこれを読んでいるあなたも相当な中毒者でしょうから、この作品を気に入るのは十中八九まで間違いはないはずですよ!

考えてみたらインターネットの魔力ってすごいですよね。
相手の顔が見えないから、逆に自分の表情を読まれないから、ついつい気が大きくなってしまう。
そして誰しもが、一番大切な事を忘れてしまう。あなたも忘れていませんか?

インターネットや仮想世界では、自分は守られていると思いがちだ。ハンドルネームを使って投稿していると、人生そのものが匿名になったような錯覚に陥って、自分に関するありとあらゆる情報をうっかりさらけ出してしまう。でも、忘れてはいけません。あなたが書いた事実――または嘘、他人があなたに関して書いた言葉は、永遠にネット上に存在し続けるんです。決して、絶対に、消えることはありません。

言葉に責任を求められるのは、現実でもインターネット上でも変わらないのに。
そうして無責任に発せられた一言には瞬く間に尾びれ背鰭がつき、足まで生えて、インターネット中を駆け巡る。
あるいは一枚の写真があっという間に全国に広まり、それに伴って憶測が飛び交い、事実が掘り返され(時にはねじ曲げられ、誇張され)、炎上する。

この作品の面白いところは、実際に稼動しているウェブサイトのURLが登場するところ(もちろん、作者の仕込み)。

[ザ・チルトン ・レポート]http://www.thechiltonreport.com

#本文中にURLアドレスが出てきたら、ぜひブラウザにアドレスを入力してみてください。(中略)作中で触れられていない、謎を解き明かすちょっとした手がかりが見つかったりするかもしれません。
とのことですが…英語圏以外の人間はどないせーっちゅーねんw
しかしこれは登場人物をリアルな人間として身近に感じられるという意味で、試みとしては非常に有効なものではないかと思います。

ここで小ネタをひとつ。
ホラー映画好きな作者は一作につき映画のタイトルを最低一度は出すことを決めているのか、これまでにも悪魔のいけにえスクリームエルム街の悪夢の名が登場してますが、今回はブレアウィッチプロジェクトSAWでした。他にも海外ドラマの名前がちらほらと。

ああ、それから、サブストーリーとして前作で起きたフアン・ミラーの安楽死事件が展開します。
ダンスの母(看護師)が、フアンの安楽死に手を染めたとして告発されるといった内容。
オチは…さんざん引っ張っておいて落ち着くとこそこかよー!と思わなくもないですが、まあこれはあくまでもサイドストーリーだし、本質は『母と娘』を巡る話なのでしゃーないとも思う。

ディーヴァー氏は2009年にも同じくインターネットを扱った作品として『ソウル・コレクター』を、更に遡って2001年には『青い虚空』を執筆していますが、共通の素材を扱いながら、いずれもまるで種の異なった作品として仕上がっているところに引き出しの深さを感じる。
私達が、この世界がインターネットを排除する事は、もはや不可能です。
であれば、3つの作品を通じて著者が語りかけているように、私達は『インターネットとどう向き合っていくのか』を真剣に考えねばならないのかもしれません。

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クリスマス・プレゼント(2003/ジェフリー・ディーヴァー著)

クリスマス・プレゼント (文春文庫)
クリスマス・プレゼント (文春文庫)
mobileクリスマス・プレゼント (文春文庫)
原題:TWISTED(ひねり)
16編が収録された短編集。
原題の通り、ジェフリー・ディーヴァーお得意のどんでん返しが満載の本です。

・ジョナサンがいない

待ち合わせのバー向かって車を走らせながら、マリッサ・クーパーは考えていた。冷たい海に沈むジョナサンのことを。ジョナサンのいない人生を。そして、これから訪れるであろう新しい人生と、光をもたらしてくれるはずの男性、デイルのことを。一方、デイルはとある女の家で、仕事に取りかかろうとしていた――そう、殺人という仕事に。

初っぱなから見事に裏切られた。登場人物全員が嘘つきで、油断ならず、それゆえに読者はころりと騙されてしまう。
一度目に読むときと二度目では、タイトルの意味がまるで違って聞こえるのだから不思議なものです。

・ウィークエンダー

田舎町のドラッグストアを襲撃した二人組の強盗が、客と店員と警官を撃ったあげく、人質をとって逃げた。まんまと警察の目を逃れて辿り着いたのはウィンチェスターという寂れた町。そこに一晩身を置くことに決めたとき、人質の男がはじめて口を開き、そして、ある提案を持ちかけてきた……

ウィークエンダーとは週末の旅行者のこと。
強盗も人質もいかにもジェフリーディーヴァーらしい設定のキャラクターだと言ったら、分かる人にはわかってもらえるでしょうか。
読み終えたあとに、ひんやりとした感覚が心臓を撫でていくような、ちょっぴり怖い話。

・三角関係

モー・アンダーソンとその上司ダグの関係に、ピーター・アンダーソンは苛立ちを募らせていた。もう何ヵ月も前からずっと考えていた。ダグは死ななくてはならない、と。そしてとうとうピーターは『三角関係』という実録犯罪本を手本に、ダグ殺害計画を実行するのだが……

本書で一番のお気に入り、そしてオススメはこれ!
「どこへ着地するつもりなんだろう?」と自分なりにいろいろと予想を立てながら読んでいたのに、ゴールテープはまったく別の所にあった。あまりの驚きに鳥肌すら立ちました。
そして更なる悲劇を予感させる余韻がまたイイ…!

・釣り日和

広告代理店で働くアレックスの趣味は、収集と釣り。曇天のその日も彼は鬱蒼とした森の中にある湖へと足を向けた。しかしその胸中にあるのは隠しきれない不安。今朝、幼い娘がしきりに「嫌な予感がするの。行かないで」と言っていたのを思い出す。この周辺で起きた四件の殺人事件のことも。そして、アレックスの前に一人の男が現れ……

鮮やかかつ無駄のないひっくり返し。しかもキャラクターのバックグラウンドがしっかりしているため、返し方にも説得力がある。
「なるほどね~」と唸らさせる1作。

・宛名のないカード

些細なこと――それがデニスの心に降り積もる。ほんの些細なかけら。妻のメアリは自分に隠れてどこへ電話をかけているのだろう? オフィスから家までの不可解な空白の時間、どこで何をしているのだろう? クリスマスまであと二週間と迫ったある日、デニスは妻が化粧箪笥の引き出しに何か隠すのを見た。それは宛名のない赤いクリスマスカードだった。

デニスのキャラクターが突飛な気がする。彼の人間性を形成したであろう幼少期から少年期の話が一行も出ていないからでしょうか…。
“釣り日和”とは真逆だなー。サイコホラー的な後味の悪いストーリー自体は好きなだけに、そこだけが残念。

・クリスマス・プレゼント

クリスマスのその日、ライムのもとに持ち込まれた事件は、ある意味で変わり種であった。大学生の少女がやってきて、ほんの四時間前に“失踪”した母親を探してくれないかというのだ。それは事件にもならない事件に思えた。だが、事態は次第に驚くべき展開を見せ……

大好きなリンカーン・ライムシリーズの番外編!(`・ω・´)
ライムとアメリアとトム(クリスマスに浮かれ気味。笑)と、ロン・セリットーがちょこっと出てきます。
短くても本格ミステリ、そしてしっかりスリリング!
読者に意図を悟らせないギリギリのラインを狙って張り巡らされた伏線の巧みさにはさすがの一言。

・パインクリークの未亡人

小さな会社の社長だった夫を去年亡くしてから、サンドラ・メイはずっと救いの手を必要としていた。このままでは倒産してしまうであろう会社を救ってくれる手。彼女自身を救ってくれる手。偶然出会った投資家兼ブローカーのビルこそがその手の持ち主だと、サンドラ・メイは思った。そのはずだったのだが……

騙し騙されまた騙して、のサスペンス的なドキドキわくわくが味わえる1作。
読後感も、すっきり…してもいいのか?とためらいつつもすっきり。

・ひざまずく兵士

その夜、庭のビャクシンの茂みにしゃがみこむ人影を見つけた瞬間に、ロン・アシュベリーは激しい疲労と怒りに襲われた。それは過去八ヶ月間にわたって彼の最愛の娘、グウェンをストーキングしてきた犯人に間違いなかったからだ。やっとの思いで精神病院に閉じ込めたはずが、奴はたった一週間で戻ってきた。娘の危機、家族の危機を前に、ロンは憎きストーカーとの対峙を決めるのだが……

読後感の評価が結構割れているみたい。
いわく、「後味が悪い」「中途半端」「なんでこれで終わるの?」「すっきりしない」
そういった意見もわからないではない。でも、私はこのオチ大好きです!
シニカルな目線で“人間”を描くディーヴァー氏らしいオチだと思う。
あとロンの人間性をどうとらえるかによっても受け取り方が180度変わるんでしょうね。彼の教育論に賛成で、彼の肩をもつ人にとっては、嫌~なオチに感じられるのでしょう。
私は率直に言って「こんな父親嫌だな」とげんなりした派。

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白雪姫と鏡の女王(2012/アメリカ)

白雪姫と鏡の女王 スタンダード・エディション [DVD]
白雪姫と鏡の女王 スタンダード・エディション [DVD]
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白雪姫は18歳。幼い頃に父親である国王が亡くなって以来、継母の女王に城に閉じ込められていた。宝石やドレスが大好きなワガママ女王のせいで、今や王国は破産寸前。女王は隣国のリッチでハンサムな王子と結婚することで、富も愛も手に入れようと企む。だが、王子は白雪姫と恋におち、怒った女王は姫の殺害を命じる。森に逃げ込んだ白雪姫は、7人の小人のギャング団に仲間入りし、様々な戦術や知恵を教えられる。果たして白雪姫は、お姫様から“ヒーロー”へと成長し、王国を取り戻し、王子の愛を勝ち取ることが出来るのか―?


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まずはアニメーションとともに進行する、女王(ジュリア・ロバーツ)による過去の語り。
これが何とも言えず心地よく、この人ってこんなにいい声してたんだ!と感動。

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そしてインパクトありすぎな白雪姫
同意見多数だと信じてるけど、正直「え……?」って思いました。
でも!この子がね!どんどん可愛く見えてくるんだよ!っていうか実際可愛くなってるからね!

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白雪姫も好きなんだけど、自分に正直すぎで、美しく、どことなくコミカルな女王様も悪役ながら憎めないものがあります。
(憎めないのはのちのち手痛いしっぺ返しがあることがわかっているからかも?)
悪役女王らしく、自分の贅沢のために「パンこそ肉、貧しさこそ幸せ」なんていう意味の分からない理屈付けのもとに貧民から税を搾り取ろうとするんですけどね。迷言だなコレ。

ところで、増税の(表向きの)理由というのが『森に潜む怪物から民を守るため』。
てっきりただの口実かと思いきや、実在していたのはちょっとした驚きでした。その正体には実は秘密があったり。
ただ、造形が安っぽいドラゴン(どことなく中華テイスト)だったのは残念だったかなー。この子だけ世界観から浮いているような気がしました。

そして女王といえばやっぱり『鏡』。
困ったことがあるたび「魔法でなんとかして」と命じる女王に対して、鏡はいつも「代償を支払う?」と問うのです。
この代償とはなにか?についてはラストで明かされます。


7人の小人の小悪党っぷりがまた面白い。
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もうね、ものすごい勢いでスレてるから。
そもそも彼らの“お仕事”からして、森の通行人を襲って金品を巻き上げることですからね。
原作のイメージどこいったんだよ!最高です

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こんな感じで巨人に扮して出撃です。


白雪姫のハズが、なぜか不思議の国のアリスのネタが。アリス好きなので嬉しい。
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衣装もセイウチだとかニセウミガメだとか、チョイスが渋い!


恋愛要素は決してクドくなく、でもだからこそ萌える。
女王にうまく言いくるめられている王子と、女王と戦うことを決めた白雪姫。
お互い好きなことに変わりはないんだけど…というもどかしいすれ違いも定番ながらグッとくるものがあります。

王子と女王の結婚が決まって涙ぐむ白雪姫に対する小人たちのセリフがいいな、と思う。
「彼女どうしたんだ?」「王子が好きなんだよ」「昨日殺されかけたのに?」「それが恋ってもんだ」
そう、それが恋ってもんなんです。

その王子も初登場でこんなんされます(笑)
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全体的に隙のあるキャラで固めてあるところが親しみやすさの秘密なのだと思う。


最後に、『白雪姫』の一番のキーワードである毒りんごをああいう風に使うとは思いきった決断をしたなーと思ったけど、かえって印象的になってよかったのかもしれませんね。
童話アレンジは近年の流行らしいですが、原作の骨組みにちょちょっと色づけをしただけの映画が多い中、これはそういった作品群と一線を画す存在であることには間違いない。
ファンタジックでありながら、どこか現代的でスタイリッシュな空気感があって、笑えて元気になれる良作でした!

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ポーカー・レッスン(2006/ジェフリー・ディーヴァー著)

ポーカー・レッスン (文春文庫)
ポーカー・レッスン (文春文庫)
mobileポーカー・レッスン (文春文庫)
16編が収録された短編集。
あ、厚い!分厚い!それもそのはず、この本670ページもあるのです。
文庫本でこれですからちょっと持ちづらいのは否めない。でも中身のいっぱいつまったプレゼントボックスみたいでわくわくもします(*´∇`*)

章と節

大物麻薬密売人を密告しようとした男が殺された。彼のそばには走り書きのメモ、その内容は――『やつが来る。用心しろ。ルカ、12:15』 ルカによる福音書の十二章十五節を指しているようだが、一体何のヒントなのか?シルヴァーマン刑事は牧師を訪ねる……

英語の言葉遊びネタにつき、翻訳するとしっくり来ないネタ。トップバッターとしては空振り感が否めない。

ウェストファーレンの指輪

骨董品店を営む傍らで、貴族相手の泥棒を家業としている男、グッドキャッスル。あるとき、彼はメイヒュー卿のアパートから指輪を盗み出した。ところがこれが卿にとってかけがえもなく大切なもので、ロンドン警視庁が動き出す。悪いことに、グッドキャッスルは現場に多数の微細証拠物件を残してきていた……

1892年のお話でありつつも内容は微細証拠物件にスポットを当てた内容で、やっぱりジェフリーディーヴァー氏の作品だなーと。ミステリとしてよりは、どう逃げ切るのかというスリル面が面白い話!
グッドキャッスルのキャラクター設定が絶妙で、犯罪者なんだけどどうか逃げ切ってくれと応援したくなるのが不思議でした。
後半に登場したまさかの人物にニヤリとしない人はいないのでは。

生まれついての悪人

ある雨の日、オレゴン州の人里離れた一軒の家の中。リズ・ポールマスはひとりミシンに向かって物思いに沈んでいた。三年も音信を断っていた娘がここを訪ねてくる、その事実が彼女の心を掻き乱している。リズに対して反抗的な態度を貫いてきた娘。無断外泊を繰り返し、万引きで捕まったこともある娘。なにもかもが根本的に自分とは違う娘。その娘が、一体なんのために訪ねてくると言うのか――?

これぞどんでん返しのお手本!
何気ない台詞の一つ一つに至るまで、なにもかもがきれいに180度ひっくりかえってしまう、こんなきれいなネタもなかなかお目にかかれないでしょう。
読み終わったあと、すぐにもう一度読み返したくなること必至。

動機

ボイル警部は、長きにわたる戦いの末にひとりの殺人犯を逮捕した。名前はフェラン。彼の犯行であるのは明白だった。証拠はある。自白もある。だが、ボイルの気持ちにはまだひっかかりが残っていた。“動機”だけが空白のままなのだ。どうしても犯行動機を知りたいボイルはフェランとの面会を申し入れる。

オチはたやすく想像できてしまったけど、絶望感漂う〆が好きです。
フェランは結局何者なのか?の説明がないのがちょっと消化不良。学生時代にボイルがフェランをいじめていた、とかだったら怖くていいのですが。

恐怖

美しいマリッサは、一月前に知り合ったばかりの恋人アントニオに連れられて、週末の休暇を過ごすための別荘に向かっていた。だがそのささやかな旅は彼女にとって奇妙で、恐ろしいことばかりだった。治安の悪い通りで「お悔やみを言うよ。あんた、ルチアだろう?」などと話しかけてくる不気味な老婆、こちらをじっと見ている双子の少年……。いざ別荘についてからも、不安と恐怖はマリッサにつきまとい続けた。アントニオの不自然な行動という形になって――

作者のホラー映画好きがかいま見える作品。
想像と余韻が残る話で、これがトリでもよかったんじゃないかな?と思うくらい。

ロカールの原理

慈善実業家のロナルド・ラーキンが殺された。朝早く、寝室で眠っているところをバルコニーから銃撃されての死だった。強盗目的ではない。では一体誰が、なんのために? 現場に残されていたものは微量の糸屑や砂。ライムはそこから答えを導き出すことができるのだろうか? さらに、目撃者である妻を狙う謎の男が現れ……

短い話なのにバタンバタンひっくり返してくれますねー。
ところでいよいよ彼らの世界の時間の進み方に疑問を抱き始めたのは私だけじゃないよね?
ライムとアメリアがコンビを組んで数年って書かれてるけど、もう数年とかのレベルではないような気がする。
パムの成長を見る限り、ボーンコレクターから少なくとも十年は経過してるはず…なのにメルはいまだ三十代。謎だ。

ポーカー・レッスン

勝負師ケラーのもとに、ある日現れた18歳の少年トニー。いかにも無鉄砲で世間知らずらしい彼の望みはケラーが裏で開催しているポーカーゲームに参加すること。ケラーは最初渋っていたが、トニーが両親から多額の遺産を相続していると聞いて態度を一変。ケラーはトニーをカモにすることを企てるが……。

14作目にして表題作。ここまで多量のどんでん返しを食らわされていると、嫌でも行き着く先が予想できてしまうのが痛いところ。ストーリーが導こうとしている“自然な流れ”とは真逆を読めばいいのですから。
その点この話は鮮やかだった。
なにせ、そういった読者の慣れと高慢を予想して裏切るべくして作られているのです。まんまと騙されてしまった。
ただ、ポーカーのルールをまったく知らない私には入り込み辛かったのも事実。ベット?チェック?レイズ?なにそれ?ってなもんです。生き返るの?
作中ではこういった基本用語の説明はないので、各自事前に調べておくことが必要。

遊びに行くには最高の町

詐欺師のリッキーは、その日、行きつけのバーで一人の男に目を留めた。安酒を振る舞うバーには不似合いなスーツ、高級ボートの写真や書類が詰まったブリーフケースを開いて、顧客らしき男と話をしている。一見誠実そうなセールスマン。だが、生まれながらのペテン師であるリッキーにはお見通しだった――スーツの男は詐欺師だ、と。さっそく、リッキーはその男と手を組んで詐欺を働こうとするのだが……

騙したと思ったら騙されていて、騙し返して、でもまだ裏があって……ぐるぐるぐるぐる目まぐるしく回転しては立場を変える裏表に目が回りそうになる話。
分類すれば勧善懲悪モノということになりましょうが、にも関わらず心の隅になにか冷たい、皮肉なひとかけらを残すラストが印象的でした。

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そして誰もいなくなった(1939/アガサ・クリスティー著)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
mobileそして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

イギリス、デヴォン州のインディアン島に、年齢も職業も異なる10人の男女が招かれた。しかし、招待状の差出人でこの島の主でもあるU・N・オーエンは、姿を現さないままだった。やがてその招待状は虚偽のものであることがわかったが、迎えの船が来なくなったため10人は島から出ることができなくなり、完全な孤立状態となってしまう。不安に包まれた晩餐のさなか、彼らの過去の罪を告発する謎の声が響き渡った。告発された罪は事故とも事件ともつかないものだった。その声は蓄音機からのものとすぐに知れるのだが、その直後に生意気な青年が毒薬により死亡する。さらに翌朝には召使の女性が死んでしまう。残された者は、それが童謡「10人のインディアン」を連想させる死に方であること、また10個あったインディアン人形が8個に減っていることに気づく……


新訳版です。
語り口調が現代的になった分、取っ付きやすさではこちらの方が上かな。
しかし個人的な好みで語るならば、私は断然!旧訳版が好きです。あのいかにも翻訳物らしい、淡々とした文体の方がこの作品には似合っていました。

なにより残念でならないのは、インディアン島兵隊島になってしまったこと。
言葉狩りが名作を死なせたいい例だと思います。
差別用語とされる語句は年々数を増やし、変わり続けています。変更されるのは仕方ないにしても「兵隊さん」ではあまりにも腑抜けた印象になってしまって味気ない。
物語の雰囲気にも相応しくないし、もう少し別の言葉はなかったのだろうかと思わずにはいられません。

旧訳の方が(何度も読み返したゆえの慣れもあるでしょうが)文体がきっぱりしていて好きでした。舞台の不気味な雰囲気にもマッチしていましたし…
この作品は、おそらくは原文が淡々としているのでしょう。
新訳はその淡々とした文章運びの中に無理に柔軟性を持たせようとしており、やけにぎくしゃくとした印象を受けました。

ただ、始めてこの話を読まれる方にはそれほど影響はないかな。ストーリーの面白さは変わりなく、です。
作品自体は(`・ω・´)オススメ!、翻訳が(´・ω・`)ショボーンということで。

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