殺人鬼と宇宙人とうさぎ。

Category Archives: ミステリ

グランド・イリュージョン(2013/アメリカ)

マジシャンとして一流の腕を持つアトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)は、フォー・ホースメンというスーパーイリュージョニストグループを束ねていた。彼らはマジックショーの中で、ラスベガスから一歩も動くことなく、パリにある銀行から金を奪ってみせた。この件を受けて、次の計画を彼らが実行する前に食い止めようとFBI特別捜査官のディラン(マーク・ラファロ)が捜査を始めるものの……。

原題:Now You See Me

掴みは突然始まるマジックから。
無作為なカードの中から観客に任意の一枚を覚えさせ、そのマークをマジシャンが言い当てる…という定番のネタなのですが、画面の前で参加してたらまんまと当てられてびっくり!
“その”カードが目につきやすいように何分の一秒かのレベルで映像に仕掛けが施されてるとかかな?

お話としては、
“マジックを使ってここから一歩も動くことなく、銀行から現金を盗んでみせる”と豪語するマジシャン4人組による大掛かりな犯行の行方と真の目的、そして彼らを雇っている謎の人物は誰なのか?
がメインになっています。

ここぞと言う場面で活躍するのがマジックではなく催眠術であるところは、考えようによっては微妙。
マジックが売りの映画でCG多用なのも微妙。

映画ですから見た目のインパクトが大事なのもわかりますが、何から何までCGじゃなくって、現実的に演技可能なネタをメインに使ってほしかったな。
更に、近未来的なSFテクノロジーが登場しちゃうのも良くも悪くも、と言ったところ。

おまけに最後がちょっと尻窄み。引っぱって引っぱって引っぱりまくった末の種明かしにしてはアッサリすぎるような。
4人が自身のマジシャン生命と人生を賭けてまで挑んだ大掛かりな犯罪の動機にしては拍子抜けが否めない内容で、普通そこまでやる気になれないと思う…。
個人的にはこのテの話に恋愛要素を絡めてほしくない派ということもあって、その辺もちょこっとマイナス要素になってるかも。

マジックやイリュージョンが好きな人にこそ、オススメしづらい映画。

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パーフェクト・プラン 完全なる犯罪計画(2011/アメリカ)

雪に覆われた田舎町で保険のセールスマンとして働くミッキー。妻とは別居状態、保険セールスの成績も悪く、経済状況は最悪。所有するクレジットカードも利用停止まであと一歩まで迫っていた。そんな中、彼は新しい顧客を獲得しようと、町はずれで暮らす孤独な老人宅を訪問。無事に住宅保険の契約を勝ち取るが、ふとしたことから老人が高額のバイオリンを所有していることを知ってしまう。後日、ほんの出来心からバイオリンの窃盗計画を思いついたミッキーは、老人の外出中に家へ侵入。しかし、老人が保険の加入と同時に警報装置を設置していたことで、彼は一気に大ピンチに。さらにそこへ、おせっかいな隣人が現れたことで、事態は急激に悪い方向へと転がり始めるのだった…。

原題:Thin Ice(薄い氷。転じて、危険な立場)

経済状況の悪化から人生の破綻が目前に迫りつつあるなか、ひょんなことから他人に窃盗計画を見破られ、しかもそいつが隣人を殺してしまい共犯として死体処理を手伝うはめに陥った主人公。
これだけ聞くと気の毒な男……ですが、いやいやコイツは元々なかなかの悪です。

自分の無能を他人に押し付けたり、自分に有益なように部下を利用したり…話が進めば進むほど同情しづらい男。
しかしながら、この下衆さが後々のストーリー展開にしっかり噛んでくるあたりが計算高いです、この映画。

重ねて面白いのは邦題の『パーフェクト・プラン 完全なる犯罪計画』。
見ていると、主人公の窃盗計画は全くパーフェクトではないのです。
何をするにもその場しのぎの行き当たりばったりで目先3cmくらいのことしか考えてない。
…にもかかわらず、観終わったあとはなるほどね~と納得できてしまうという。

コメディと銘打つほどのおかしさはなく、むしろ主人公のクズさに苦笑してしまう場面が多いかも。

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ゴースト・スナイパー(2013/ジェフリー・ディーヴァー著)


アメリカ政府を批判していた活動家モレノがバハマで殺害された。2000メートルの距離からの狙撃。まさに神業、“百万ドルの一弾”による暗殺と言えた。直後、科学捜査の天才リンカーン・ライムのもとを地方検事補ローレルが訪れた。モレノ暗殺はアメリカの諜報機関の仕業だという。しかも「テロリスト」とされて消されたモレノは無実だったのだ。ローレルは、この事件を法廷で裁くべく、ライムとアメリア・サックスを特別捜査チームに引き入れる。スナイパーを割り出し、諜報機関の罪を暴け―ライムと仲間たちは動き出す。だが現場は遠く、証拠が収集できない。ライムはバハマへの遠征を決意する。一方、謀略の隠蔽のため暗殺者が次々に証人を抹殺してゆき、ニューヨークで動くアメリアに、そしてバハマのライムにも魔の手が…


キャラクターの印象が二転三転するこまごまとした変化を楽しむのが主で、事件に関する見方が180度変わってビックリ!とか、あの人が犯人だったなんて!などのガツンとくる部分が少なかった。
料理好きで冷徹な犯人も、せっかく魅力的だったのに最後の最後でフツーになってしまったと言うか、今一歩突き放しが足りないと思う。

そして、それは他のキャラに対しても言えるかもしれない。
シリーズ最初の頃は、それこそメインキャラクターですら安全圏ではありえないという緊張感があったし、実際信じられない人が信じられない形で退場してしまうこともあったけど、最近のメインキャラは作者の寵愛を一身に受けていることがうかがえて、どんな危機的状況のさなかにあっても「でも死なないんでしょう?」とちょっと冷めた目で見てしまう…。
やっぱり愛着が湧いてしまうものなんでしょうね。

前作のバーニングワイヤーが凄まじかっただけに、少しパワーに欠けるかなと感じましたが、それは私が政治絡みのネタがあまり得意じゃないからかも。外国の政治ってなんだかしっくりこなくて。
それにライムって政府と戦うキャラではないと思うんですよね。

検事補のローレルも今一つ掴み所がなく感情移入できず、そんな彼女がライム一行の出番を食ってしまっていることにただやきもきさせられただけ。
すべてを仕組んだ真犯人に関しても、意外であること、全く見抜けなかったことは認めるけど、かといってどうでもいい部分をつついてきたなあと感じるのは否めない。あの人が犯人であろうとなかろうとたいした感慨も湧かないというか。

レギュラーキャラは相変わらず魅力的です!
ライムにくどくど叱られながらも末っ子ポジションとしての手腕と魅力をいかんなく発揮しているプラスキーは、どんどんメインキャラとしておいしい役回りを掴みつつありますね。
トムはまたしても漢を見せたし、そんなトムに対してライムが『生まれたときからずっと知っているような気がする友人』とまで思ってた事実には涙が出そうだった。

それに、もちろんサックスも。
並外れた知識人たちの中で、これまでのサックスの役割は歩くこと、探すこと、撃つことが主でした。
チェスで言うならポーンの位置であったように思いますが、今回はスナイパーライフルが取り上げられているだけあって銃の得意なサックスも知識を授ける側に立ち位置を変えています。
これが特に嬉しかったなー。

サックスといえば……ライムの体が徐々にではあるが機能を取り戻し始めている反面、サックスの関節炎が悪化の一途をたどっているのは少なからず嫌な予感がすると共に、この二人はどこまでも一心同体なんだなと感じさせられました(さんざん不穏な空気を漂わせておいてからのあのラストは華麗だった!)。

サックスのカマロに続いて、今回はライムの車椅子が犠牲になっちゃったしね。
ここにも二人の絆というか縁みたいなものを感じられて、気の毒ではあるけど思わずニヤリ。

どんでん返しだけに着眼すると物足りないけど、騙しのテクニックはさすがの一級品でした。

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兎の秘密(2004/佐野 洋・著)


昔ばなしに隠された謎が見事に暴かれる!
「かちかち山」の兎と狸の「妖しい関係」があぶりだす殺人事件の真相。「浦島太郎」が乗った亀は、タイムマシンだった? 「花咲爺」で本当の悪者は誰だったのか? サルカニ合戦を恐れ、さる年の男を拒絶する蟹座の女。一寸法師と内視鏡の深い関係とは――。日本の昔ばなしを斬新な発想で愉しむ異色短編集。


かちかち山、桃太郎、浦島太郎、舌切りすずめ、花咲か爺さんなど、誰もがよく知っている昔話を様々な角度から紐解きつつミステリーと絡めるという一風変わった短編集(ミステリーじゃない話もあります)。
テーマは昔話ですが時代は現代です。
1作目の『兎の秘密』は15年前の殺人事件をめぐる夫婦と一人の男の話だし、次の『桃太郎は意地悪』も不倫関係にある男女がホテルで交わす会話から始まるし。

全体的な印象としては、作者が昔話を読んで思いついたツッコミや下世話な妄想を形にしてみたかっただけ…という感じが。
だからどの話も自己完結型で娯楽としての肉付けが絶対的に不足してる。
こちらの感情とか推理を差し挟む余地のない分、暇つぶしの読み物としてはサラッと読み流せるけど、面白いかどうかという点になると…。

読者とは一線を引いた、どことなくそっけない印象を受ける話ばかりです
座談会形式で進むネタなんかは読者が置いてけぼりになるのは仕方がないとして、その他の話に関してもすでに終わった事件の記録に過ぎなかったり、その上で「オチはないのがオチです」とかやられたりする。

しかもエロスとか色気じゃない、本当にただ下世話なだけの下ネタオンパレードがいかにもおっさんセンスなのがいたたまれない気持ちになる……。

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4.3.2.1(2010/イギリス)


4.3.2.1 [DVD]
mobile4.3.2.1 [DVD]

高額のダイヤが盗まれたというニュースが、ロンドン中を駆け巡った! ジョー、カサンドラ、ケリス、シャノンの4人の大親友は、別々に行動していた。しかしシャノンは、偶然盗まれたダイヤを手にし、ダイヤ窃盗団に追われるハメに―! そして複雑に絡み合った彼女たちの運命は結びつき、シャノンを助けるために、3日間で、2つの都市を股にかけダイヤ強盗と対決する! 生き残るために残された、たった1つのチャンスを彼女たちはモノにすることができるのか!

原題:4.3.2.1

4321-08
4人の美女
3日間
2つの都市
1つのチャンス
…で、4.3.2.1。

4人それぞれの金曜日からの3日間をそれぞれの視点で描いた群像劇映画。
一方の視点では見えなかった事柄が別の視点では鮮やかに浮かび上がり、点と点が結ばれ、やがて一つの終着点へと向かう…ってパターンのアレですね。
『バンテージ・ポイント』や『11:14』が好きな人ならこれも好きなはずですので、特にオススメです。

あと可愛い女の子が好きな人にもオススメ!
4人それぞれタイプが違って、だけどみんなキュート&セクシーなの。
全員が甲乙つけがたくステキで萌え萌えしながら観てました(*´Д`*)

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シャノンは彼女は自分に自信がなくて、いつもおずおずしている子。
父親には「母さんが出て行ったのはお前のせいだ」と責められ、母親からは「あなたを生んだのがそもそもの間違いだった」と罵られ。
彼女の描く絵や、しばらく大学を休んでいた旨のセリフから堕胎したんだろうなーというのは早いうちから見当がつくのですが、そう思いながら観ると実に重たい…

4321-03
カサンドラはお金持ちの家の令嬢で、週末はピアノのオーディションとネット友達との初対面のためにニューヨークに旅行する予定。
彼女の両親はシャノンの両親とは違って過保護ぎみで口うるさいものの、お互いのことを愛しているし娘のことも愛してる。
ちなみに彼女、「アナタほんとに人間ですか?」って聞きたくなるくらいスタイルがいいです。

4321-04
ケリスには義理の父親と種違いの兄がいます。
兄との中は最悪も最悪で、お互い本気で殺意抱いてるレベル。
父親はといえば、問題児のケリスに手を焼きつつも彼女のことを本当の娘として愛してくれてる人格者。ゲスいキャラが多いこの映画においては神にも等しい。
ケリスはやることなすこと恐れ知らずかつダイナミックで見てるとほんと楽しい。

4321-05
ジョーは家族から召使い程度の扱いしか受けていない不憫な子。
彼女の母親(ジョーには嫌味たっぷりだけど、妹のグウェンには激甘)を見て「…ぶちころしてえ(^ω^#)」と思わない人はいないであろう…。
本当の父親が亡くなってからというものずっと『いい子』を演じ続けてきて、どんな理不尽にも要求にもイエスと答えてきた彼女が求めている見返りが「ありがとう」の言葉だけって言うのが妙に切なかったなあ。

ところで彼女、ものっっっっっっすごーい美人!です。色も白くて透明感がすごい。あのジュリア・ロバーツの姪っ子だけある。
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友達のことは大切だけど、たまに周りが見えなくなる。自分のことだけで精いっぱいになってしまう。だけど、わかってほしい。私にはまだそんなに多くのものを抱えるだけの器がないだけで、悪気なんてないの。

この映画にはそんな年頃の女の子の大変さや女同士の友情につきものなアレコレがリアルに現れてて、時々チクッとした痛みを感じることも…
それでも重たくなりすぎず、程よくコミカルなおかげで救われる部分も多かった。

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最後はみんなが笑顔になれてよかったけど、それだけに嫌な予感を匂わせるオチはいらなかったなあ。
スパッと綺麗に終わってほしかった。

クライムサスペンス…と呼べるほどの内容でもないので、そこは注意かも。
あくまでも4人の女の子が過ごした慌ただしい3日間のお話で、『複雑に絡み合った彼女たちの運命は結びつき…』とか『ダイヤ強盗との対決』感は薄いです。

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厭な物語 (文春文庫)

厭な物語 (文春文庫)
厭な物語 (文春文庫)
mobile厭な物語 (文春文庫)

タイトルの通り『厭な物語』ばかりを11編も集めた、短編オムニバス。
一人一人の簡単な紹介文があるのが、初読の作家が多い私にとっては嬉しい。
とはいえ新しい作家を発掘する取っ掛かりにするには、この本はハードすぎる気もしますが…(´▽`;)

・崖っぷち

著者:アガサ・クリスティ

イギリスの平和な村に住むクレアとジェラルド、そして彼の若妻ヴィヴィアンを巡るお話。
クレアは敬虔なクリスチャンで、まっすぐな心の持ち主。ひそかに思いを寄せていたジェラルドがヴィヴィアンと結婚してしまっても、彼女は決して取り乱さず、誰をも憎むことはなかった。
ところがある偶然からヴィヴィアンの浮気の証拠を掴んでからというもの、クレアの心にはわずかな変化が。

この話の何が怖いと言って、他人の弱味を大事に仕舞い込み、ときおり本人の前でちらつかせては優越感に浸るクレアの気持ちに共感してしまうところにあると思うのですね。
醜さへの共感。そんな自分に嫌気がさすというか、後ろめたいというか。
悪意は他人を壊すけれど、時に自分をも壊す両刃の凶器にもなりえる、そんな現実を淡々とどこか上品に書ききっているあたりがクリスティ女史らしい。


・すっぽん

著者:パトリシア・ハイスミス

11歳の少年ビクターは売れない挿絵画家の母親と二人暮らし。
この母親はビクターをいつまでも6歳の子供として扱いたがり、彼に半ズボンの服を着せたり(当然のように学校では笑い者)、「ねんねの坊や」と呼びたがる。
ビクターは完全に母親に人生を支配されていた。そんなある日、母が買って帰ってきたのは一匹のすっぽんだった。

ビクターは「死とは逃避ではなく、激しく苦しいもの」だと考えている。
母親のもとから逃げなかったのは、そうすると母親もまた『逃げた』ことになるからと考えたからだろうか。
すっぽんに激しく苦しい死を与えた母親にはやはり死がふさわしいと、そう思ったんだろうか。

階下に住む同い年の少年に、「明日すっぽんを見せてあげるよ」と約束したこと。ビクターにとっては人生で一番大切で意味のある約束だったに違いない。
ところが母親は翌日を待たずにすっぽんを調理してしまい、おかげでもう二度と友達を作るチャンスはやってこない。
逃げられない、とビクターは思った。あのすっぽんのように、自分も煮えたぎった鍋の底に置かれていて、自力ではどこへも行けず、あとはただ死ぬのを待っているだけなんだと悟った。
本当にそうだったのかもしれない。そうじゃなかったのかもしれない。

ところで、彼をそこまで駆り立てたすっぽんとはどんな役割だったんだろう。読み直すたびに印象が違って、どうとでもとらえられる気がする。
あるいは、友達を作るための道具。
あるいは、友達そのもの。
あるいは、母親に共に立ち向かう戦友。
あるいは、囚人仲間。


・フェリシテ

著者:モーリス・ルヴェル

フェリシテという娼婦は、その名前(至福を意味する)とは裏腹に貧しく、若くも美人でもなく、さして幸福でもなかった。それでも誰にも疎まれることなく今日を生きていけるのだから、まあまだましとも言える。
ある小雨の晩、彼女はひとりの紳士と出会い、毎週土曜日に二時間だけ話をする関係になる。紳士の存在はフェリシテの人生に希望を与え、彩りを与え、ぬくもりを与えた。
次第に紳士に恋心を抱くフェリシテ。彼女はこの幸せがいつまでも続くものだと思っていた。

出会いが幸福であればあるほど、別れはつらいもの。より大きな幸福が、それまでの幸福を奪うことも、時としてありうる。
一度幸福に慣れてしまった心は柔らかくなりすぎて、次に来たる不幸に耐えられなくなってしまう。

フェリシテの人生の片道切符になったのは、紳士が渡した紙幣だったと私は思う。結局彼はフェリシテを安い娼婦として見ていたに過ぎなかった、そのことが手切れ金として渡されたこの紙幣一枚から滲み出している。
なんか、中途半端に餌付けされた野良猫の末路ってこんなものなのかな…。


・ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ

著者:ジョー・R.ランズデール

暇を持て余したレナードとファートはその夜、ハイウェイで犬の死骸を見つける。悪乗りした彼らはそれを自分達の車に鎖で繋ぎ、町中を引きずり回すことに。
その道中出会ったのは同じ学校に通う黒人のスコット。スコットは白人グループに取り囲まれていまにも殺されそうになっていた。
かくいうレナードとファートも彼のことを『ニガー』と呼んで忌み嫌っていたものの、フットボールの重要ポジションであるスコットを失うのは自分達の損失にも繋がると考え直し、彼を助けることに。
三人を乗せた車は追っ手を振り切りとある倉庫の駐車場へ。そしてその場所で、今夜の退屈は霧散する……

しんみりと厭な話が続いて、まあこんなもんかと油断したところにぶちこまれる、ド直球の胸糞系。
よくある量産型のスプラッタホラー的……ってまさにソコを狙ったんだろうけど。
作者のどや顔が透けて見える分『厭さ』は薄かった。
言い方は悪いけど、こういう安っぽい質の悪意はB級ホラーでよく見かけるから慣れちゃってるんだろうと思う。
主人公がそこそこの屑だし、そんな奴らがどうなったって知るものか……そんな気持ちの方が強いのも大きい。


・判決 ある物語

著者:フランツ・カフカ

ゲオルクは父親の店で働く年若き商人。二年前に母親を亡くしたばかりだが、反対に商売の方は左団扇だった。
彼は数年前にロシアに移住した友人への手紙を書きおえたばかりで、その内容は自分の婚約について。向こうで商売に失敗し、孤独に暮らす友人に自分の幸福を知らせるのは気が咎めるからと、ゲオルクはこの知らせをずっと後回しにしてきたのだ。
しかし今回ようやく決心を固めた彼は部屋にこもりきりの父親に「手紙を出すことにしたよ」と報告する。ところが父親は「お前にロシアの友人などいないだろう」とゲオルクを罵りはじめ……


友人の病気に気づきながらそれを案じることもなければ、助けの手を差しのべることもないゲオルク。その気になれば彼にはそれができるのに。
国に帰ってこいと言わないのは友人のプライドを慮ってのこと、俺は気を遣ってやってるんだ。それに本人だって今さら戻ってきたくはないはずだ……万事が万事そんな風で、誰かのためと言う名の言い訳を探しては自分が動かなくても済む道を選んでいる彼。

それでいて自分が悲しんでいるときに思うほどの同情や救いの手が集まらなかったりすると、「あいつは冷たい。そっけない。俺のことなどどうでもいいんだ」と腹を立てる自分本意っぷりに厭~な気持ちになります。
だけど、人間誰しも多かれ少なかれ同じような面を持っているのではないでしょうか。だからこそ父親の死刑宣告が、我が事のようにずしんと重くのし掛かる。

もうひとつ、この話を『厭な物語』たらしめているのは、これがいわゆる悪が勝利をおさめる物語であるからというのも大きな理由じゃないかと思う。
その悪とは父親。彼は商売で成功した息子を妬んで、その足を引っ張ろうとしているように見えるのです。
そう思って読み直すとまた違った側面が垣間見える。

婚約者のことなどすっぱり忘れて自殺を選んだゲオルクは、やはり最後まで自分本意な人間でしたね。


・赤

著者:リチャード・クリスチャン・マシスン

灼熱の日差しの下、男はそれを拾い集めながら旅の終わりを目指していた。道の向こうでは人々が苛立ちながら待ちわび、彼をじっと監視している。
正気を保つためにあと半マイル、歩こう。そう決めて男は足を進め、落ちているものを拾い続ける……

わずか3ページと4行の掌編。
最初は意味がわからなくてもどかしいかもしれない。だけどそこをグッとこらえて、一字一句丁寧にゆっくりと読み進めてほしい作品。


・うしろをみるな

著者:フレドリック・ブラウン
あえてあらすじは載せません。
いつか観た『ラスト・ホラー・ムービー』と同じく、日本人がこれを真に受けて怖がるには精神的にも物理的にもハードルが高い。
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毒蛇の園(2006/ジャック・カーリイ著)

毒蛇の園 (文春文庫)
毒蛇の園 (文春文庫)
mobile毒蛇の園 (文春文庫)

惨殺された女性記者。酒場で殺された医師。刑務所で毒殺された受刑者。刑事カーソンの前に積み重なる死――それらをつなぐ壮大・緻密な犯罪計画とは?


――「死体が四つ、毛むくじゃらが一人、それに大物御用達のフィクサー。おれたちはいったい、なんに足を踏み入れちまったんだ?」

…とは、カーソンの相棒ハリーが言い放った言葉。
これほど的確に本書の複雑さを言い表す表現もあるまい。もはや毒蛇の園というよりは迷路です。
事件の中心人物が多い…というよりは誰が中心人物なのかがわからないくらい入り組んだ展開が続くため、覚えておくべき名前が多いのがちょっとつらい。間を空けるとすぐ忘れちゃう…
なもんで、これはじっくり腰を据えて短時間で読んでほしいですね! 1日で読み切ることができたら言うことなし。

というわけで、今回(も?)カーソン&ハリーの前に降ってきた事件は複雑怪奇。
現場に残された手がかりを追いかける二人は、やがてキンキャノン一族にたどり着く。
この一族は大変な資産家で、企業だろうと政界だろうと顔が利かない場所はないというほど。
まさに金で世界を動かしている彼らのモットーは『片手で与え、片手で奪う』。
最初は気前よく金をばらまき、その後金額以上の見返りを要求するってこと。

カーソンは一家の長男バック・キンキャノンに恋人のディーディーを寝取られ、ハリーは貧困層の子供たちのために作った野球場を奪われた。
彼ら二人が共通する一人の敵によって傷つけられたのは、これが初めてではないでしょうか。

このバック・キンキャノンは準主役の立ち位置なので出番も多いですが、他の兄弟たちは正直いてもいなくても変わらないような。
異常な設定に見合うほどの異常行動が見られないため、なんとなく肩すかしな気分。
脅威面でも《フィクサー》に食われちゃってるし。
ミステリは犯人にも魅力が必要だと考えている私的には満足出来るレベルではありませんでした。

もうひとりの準主役はルーカス。
カーソンの一人称視点の合間に挟まってくるルーカス視点は謎ばかり。
精神病院を脱走したばかりの彼は常に誰かに追われ、誰かを追う立場でもある。そして殺人事件の現場には彼の存在を示す証拠がわんさか…
彼の本当の姿を予測するのは難しくない。この手の小説で一番怪しいのが犯人ってのはあり得ないし。

そして私が一番売り込みたいのはハリー・ノーチラスの大活躍です。
今作は!とにかくハリーがかっこいい!
彼は保護者のようにカーソンを心配してるけど、同時に信頼してもいるんだなあって。


世間の評価通り、前作・前々作と比べるとジェットコースター的なスリルやアクションは薄いです。
だけどその分本格ミステリとしての純度は上がったんじゃないかと私は思う。
これまで幼稚だ幼稚だと思っていたカーソンが今作では悩める新人警官をサポートしたりして、大人の男&頼れる先輩な面も見せてくれてたし、その点も含めて全体的に『新しい』感じが好きだったな。
どんでん返しにも無理がなく、かつ鮮やかにキマってるし。
めでたしめでたし…からの背筋に冷たさを残す読後感もいいです(それにぬるま湯をさすようなエピローグはいらなかったかも…)。

それより文体が…
このシリーズには比喩表現が多い…という点には過去にも触れてきました。
面白くって好きなんだけど、生きるか死ぬかのスリリングな場面ではもうちょっと控えめにしてくれないかなーって…
こねくり回した言い回しがスピードと緊張感の足を引っ張っているのです。
大怪我して敵から逃げ回ってる途中や、今まさに死にそうになっている場面でオシャレな比喩は必要ない。
むしろ淡々と進めてほしい。


にしても、ジャック・カーリイってばことあるごとにジェフリー・ディーヴァーと比較されていて、本人がどう感じてるのかは知らないけどそろそろ不憫になってきた。
裏表紙のあらすじスペースでもそんなようなことが書かれてるばかりで、肝心の本の内容がちっともわかりゃしない。
そもそもあの二人は師弟関係でもなんでもないのにねぇ。カーリイ氏が独立した一人の作家として見てもらえる日はいつだ。

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ミッション:エクストリーム(2010/ドイツ)

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ミッション:エクストリーム [DVD]
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ニューヨーク。FBI捜査官のジェリー・コットンは、連邦銀行から消えた総額2億ドルの金塊の行方を追っていた。しかし、事件の鍵を握る容疑者が殺され、ジェリーはその罪を着せられてしまう。冷徹な女調査官ザナックの追跡をかわしながら、頼りない新米相棒フィルを引き連れて、事件の真相を追うジェリー。踊り子のマレーナと接触したジェリーは、マフィアの悪党どもが新たな強奪計画を立てていることを知る。そして、陰謀の裏側には“人形遣い”と呼ばれる黒幕がいた。その正体は? 謎の美女マレーナは、敵か? 味方か? ジェリーはすべての謎を解き、巨大な陰謀を阻止できるのか?

原題:Jerry Cotton

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監督の経歴についてはよく存じませんが、手慣れているのかそれとも同じジャンルの映画をよく研究しているのか(はたまた持って生まれたセンスなのか)映像割りが安定していて親しみやすいです。
ハリウッド映画なんかでもよく見るようなカメラワークと音楽。ストーリーもスタッカートリズムで小気味好い。

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これにツッコミ不在の『シリアスな笑い』が加わると、何とも言えない、一種シュールな空気感が漂います。私はここにドイツ人らしさを垣間見たのですが…

あ、ちなみにこれコメディアクションです。
だけど内容は案外しっかりしていて、邦題の「エクストリーム」が決して名前だけではないと示してくれるアクションシーンもばっちり。
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主人公ジェリーはFBIで最も有能な男とされ、「沼に落ちた自分を自分で引き上げる」――つまり、自分一人でなんでも解決できると信じている独断専行型。

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そんな彼には長年一緒にやってきた相棒がいたのですが、今回は負傷のため別の捜査官が寄越されます。
名前はフィル。まったくの新人で、人の話は聞かないし、実戦経験はなく、銃撃は味方を殺しかねない勢いのダメダメ男。
大物の父親にぜひにと頼まれた上司が、しかたなくジェリーの相棒に抜擢しただけのことのようです。

そんなフィルは最初は本当にダメダメ! ジェリーからも完璧にお荷物扱いです。
だけどそんな彼が得意の変装タップダンスを武器に敵と戦い、同僚を欺き難関を乗り越えていく姿は可笑しくもあり、どこかたくましくもあり(笑

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どうにもこうにも息の合わない二人が事件を追うのだから一筋縄ではいきません。
しかしながら、お互いがお互いの足りない所を補いながら事件を捜査するというバディものの醍醐味を感じさせてくれるバタバタ感&わくわく感は十二分で、非常に楽しめました!

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ロードサイド・クロス(2010/ジェフリー・ディーヴァー著)

ロードサイド・クロス
ロードサイド・クロス
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陰湿なネットいじめに加担した少女たちが次々に命を狙われた。いじめの被害者だった少年は姿を消した。“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスが少年の行方を追う一方、犯行はエスカレート、ついに死者が出る。犯人は姿を消した少年なのか?だが関係者たちは何か秘密を隠している―。幾重にもめぐらされた欺瞞と嘘を見破りながら、ダンスは少しずつ真相に迫ってゆく。完全犯罪の驚愕すべき全貌へと。


インターネットの普及に伴う匿名性の問題を取り上げた本書には、“ブロガー”の同義語として“エスクリビショニスト(escribitionist)”という近年生まれた造語が登場する。
この言葉は、自己顕示欲の強い人(exhibitionist)と記述(scribe)を合わせてあるのだそうです。
発音が難解だし日本じゃとても流行りそうにはないですが、アメリカではすでに普及している言葉らしい。

他にも「自分や上司や仕事の情報をブログに公開してしまった事が原因で解雇されたこと」を意味する“ドゥース(dooce)”や、「就職面接で以前の上司についてブログに書いた事はありますか?と質問されること」を意味する“プレドゥーシング(pre-doocing)”という言葉も登場。
最近の日本じゃブログよりも、『バカッター』とか揶揄されているTwitterがらみのあれやこれやを思い出す方が身近でしょうか。
ああいう行動も自己顕示欲に突き動かされてのものなのでしょうね。

ということでインターネット社会に突っ込んだミステリです。
よりによって、相手の顔の見えない世界に人のボディランゲージを読み取るのを仕事としているダンスを放り込むなんて、思いきった事をするなあと感心。
とはいえキネシクスは分岐点で光を投げかける街灯の役割を担う程度で、全面に押し出されていると言うほどではなく。
捜査は結構フツーだなって思いました。キネシクスならではの特色が欲しい人には物足りないかも。


現実と虚構の境界線を見失った少年少女の事件…なんて書くと日常からかけ離れているように感じられるかもしれませんが、よく考えてみてください。
たかがネットゲームに月数万、数十万円をつぎ込む人に覚えはありませんか?
話に聞いた事がある、知人に思い当たる人物がいる、あるいは…あなた自身がそうかもしれません。
それはまさに、現実と虚構の境界線を見失っているが故の行動ではないでしょうか?
…なんて偉そうにうそぶく私にも、そう遠くない過去に身に覚えがあったりして。

インターネット中毒な私にとってこの作品のテーマはとても興味深く、最初から最後までダレずに一気に読み進めてしまいました。
こんな辺鄙なサイトを探し出してこれを読んでいるあなたも相当な中毒者でしょうから、この作品を気に入るのは十中八九まで間違いはないはずですよ!

考えてみたらインターネットの魔力ってすごいですよね。
相手の顔が見えないから、逆に自分の表情を読まれないから、ついつい気が大きくなってしまう。
そして誰しもが、一番大切な事を忘れてしまう。あなたも忘れていませんか?

インターネットや仮想世界では、自分は守られていると思いがちだ。ハンドルネームを使って投稿していると、人生そのものが匿名になったような錯覚に陥って、自分に関するありとあらゆる情報をうっかりさらけ出してしまう。でも、忘れてはいけません。あなたが書いた事実――または嘘、他人があなたに関して書いた言葉は、永遠にネット上に存在し続けるんです。決して、絶対に、消えることはありません。

言葉に責任を求められるのは、現実でもインターネット上でも変わらないのに。
そうして無責任に発せられた一言には瞬く間に尾びれ背鰭がつき、足まで生えて、インターネット中を駆け巡る。
あるいは一枚の写真があっという間に全国に広まり、それに伴って憶測が飛び交い、事実が掘り返され(時にはねじ曲げられ、誇張され)、炎上する。

この作品の面白いところは、実際に稼動しているウェブサイトのURLが登場するところ(もちろん、作者の仕込み)。

[ザ・チルトン ・レポート]http://www.thechiltonreport.com

#本文中にURLアドレスが出てきたら、ぜひブラウザにアドレスを入力してみてください。(中略)作中で触れられていない、謎を解き明かすちょっとした手がかりが見つかったりするかもしれません。
とのことですが…英語圏以外の人間はどないせーっちゅーねんw
しかしこれは登場人物をリアルな人間として身近に感じられるという意味で、試みとしては非常に有効なものではないかと思います。

ここで小ネタをひとつ。
ホラー映画好きな作者は一作につき映画のタイトルを最低一度は出すことを決めているのか、これまでにも悪魔のいけにえスクリームエルム街の悪夢の名が登場してますが、今回はブレアウィッチプロジェクトSAWでした。他にも海外ドラマの名前がちらほらと。

ああ、それから、サブストーリーとして前作で起きたフアン・ミラーの安楽死事件が展開します。
ダンスの母(看護師)が、フアンの安楽死に手を染めたとして告発されるといった内容。
オチは…さんざん引っ張っておいて落ち着くとこそこかよー!と思わなくもないですが、まあこれはあくまでもサイドストーリーだし、本質は『母と娘』を巡る話なのでしゃーないとも思う。

ディーヴァー氏は2009年にも同じくインターネットを扱った作品として『ソウル・コレクター』を、更に遡って2001年には『青い虚空』を執筆していますが、共通の素材を扱いながら、いずれもまるで種の異なった作品として仕上がっているところに引き出しの深さを感じる。
私達が、この世界がインターネットを排除する事は、もはや不可能です。
であれば、3つの作品を通じて著者が語りかけているように、私達は『インターネットとどう向き合っていくのか』を真剣に考えねばならないのかもしれません。

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クリスマス・プレゼント(2003/ジェフリー・ディーヴァー著)

クリスマス・プレゼント (文春文庫)
クリスマス・プレゼント (文春文庫)
mobileクリスマス・プレゼント (文春文庫)
原題:TWISTED(ひねり)
16編が収録された短編集。
原題の通り、ジェフリー・ディーヴァーお得意のどんでん返しが満載の本です。

・ジョナサンがいない

待ち合わせのバー向かって車を走らせながら、マリッサ・クーパーは考えていた。冷たい海に沈むジョナサンのことを。ジョナサンのいない人生を。そして、これから訪れるであろう新しい人生と、光をもたらしてくれるはずの男性、デイルのことを。一方、デイルはとある女の家で、仕事に取りかかろうとしていた――そう、殺人という仕事に。

初っぱなから見事に裏切られた。登場人物全員が嘘つきで、油断ならず、それゆえに読者はころりと騙されてしまう。
一度目に読むときと二度目では、タイトルの意味がまるで違って聞こえるのだから不思議なものです。

・ウィークエンダー

田舎町のドラッグストアを襲撃した二人組の強盗が、客と店員と警官を撃ったあげく、人質をとって逃げた。まんまと警察の目を逃れて辿り着いたのはウィンチェスターという寂れた町。そこに一晩身を置くことに決めたとき、人質の男がはじめて口を開き、そして、ある提案を持ちかけてきた……

ウィークエンダーとは週末の旅行者のこと。
強盗も人質もいかにもジェフリーディーヴァーらしい設定のキャラクターだと言ったら、分かる人にはわかってもらえるでしょうか。
読み終えたあとに、ひんやりとした感覚が心臓を撫でていくような、ちょっぴり怖い話。

・三角関係

モー・アンダーソンとその上司ダグの関係に、ピーター・アンダーソンは苛立ちを募らせていた。もう何ヵ月も前からずっと考えていた。ダグは死ななくてはならない、と。そしてとうとうピーターは『三角関係』という実録犯罪本を手本に、ダグ殺害計画を実行するのだが……

本書で一番のお気に入り、そしてオススメはこれ!
「どこへ着地するつもりなんだろう?」と自分なりにいろいろと予想を立てながら読んでいたのに、ゴールテープはまったく別の所にあった。あまりの驚きに鳥肌すら立ちました。
そして更なる悲劇を予感させる余韻がまたイイ…!

・釣り日和

広告代理店で働くアレックスの趣味は、収集と釣り。曇天のその日も彼は鬱蒼とした森の中にある湖へと足を向けた。しかしその胸中にあるのは隠しきれない不安。今朝、幼い娘がしきりに「嫌な予感がするの。行かないで」と言っていたのを思い出す。この周辺で起きた四件の殺人事件のことも。そして、アレックスの前に一人の男が現れ……

鮮やかかつ無駄のないひっくり返し。しかもキャラクターのバックグラウンドがしっかりしているため、返し方にも説得力がある。
「なるほどね~」と唸らさせる1作。

・宛名のないカード

些細なこと――それがデニスの心に降り積もる。ほんの些細なかけら。妻のメアリは自分に隠れてどこへ電話をかけているのだろう? オフィスから家までの不可解な空白の時間、どこで何をしているのだろう? クリスマスまであと二週間と迫ったある日、デニスは妻が化粧箪笥の引き出しに何か隠すのを見た。それは宛名のない赤いクリスマスカードだった。

デニスのキャラクターが突飛な気がする。彼の人間性を形成したであろう幼少期から少年期の話が一行も出ていないからでしょうか…。
“釣り日和”とは真逆だなー。サイコホラー的な後味の悪いストーリー自体は好きなだけに、そこだけが残念。

・クリスマス・プレゼント

クリスマスのその日、ライムのもとに持ち込まれた事件は、ある意味で変わり種であった。大学生の少女がやってきて、ほんの四時間前に“失踪”した母親を探してくれないかというのだ。それは事件にもならない事件に思えた。だが、事態は次第に驚くべき展開を見せ……

大好きなリンカーン・ライムシリーズの番外編!(`・ω・´)
ライムとアメリアとトム(クリスマスに浮かれ気味。笑)と、ロン・セリットーがちょこっと出てきます。
短くても本格ミステリ、そしてしっかりスリリング!
読者に意図を悟らせないギリギリのラインを狙って張り巡らされた伏線の巧みさにはさすがの一言。

・パインクリークの未亡人

小さな会社の社長だった夫を去年亡くしてから、サンドラ・メイはずっと救いの手を必要としていた。このままでは倒産してしまうであろう会社を救ってくれる手。彼女自身を救ってくれる手。偶然出会った投資家兼ブローカーのビルこそがその手の持ち主だと、サンドラ・メイは思った。そのはずだったのだが……

騙し騙されまた騙して、のサスペンス的なドキドキわくわくが味わえる1作。
読後感も、すっきり…してもいいのか?とためらいつつもすっきり。

・ひざまずく兵士

その夜、庭のビャクシンの茂みにしゃがみこむ人影を見つけた瞬間に、ロン・アシュベリーは激しい疲労と怒りに襲われた。それは過去八ヶ月間にわたって彼の最愛の娘、グウェンをストーキングしてきた犯人に間違いなかったからだ。やっとの思いで精神病院に閉じ込めたはずが、奴はたった一週間で戻ってきた。娘の危機、家族の危機を前に、ロンは憎きストーカーとの対峙を決めるのだが……

読後感の評価が結構割れているみたい。
いわく、「後味が悪い」「中途半端」「なんでこれで終わるの?」「すっきりしない」
そういった意見もわからないではない。でも、私はこのオチ大好きです!
シニカルな目線で“人間”を描くディーヴァー氏らしいオチだと思う。
あとロンの人間性をどうとらえるかによっても受け取り方が180度変わるんでしょうね。彼の教育論に賛成で、彼の肩をもつ人にとっては、嫌~なオチに感じられるのでしょう。
私は率直に言って「こんな父親嫌だな」とげんなりした派。

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