7月 21 2013

いきもの

銀色のさかな
黒ねこのハロウィン
一匹狼の兎
夜に泳ぐサカナ
ぜんまいじかけの小鳥
銀色のライオンと金色のウサギ
水槽の鳥、籠の魚
白い鳥のおとぎばなし
白いうさぎのおとぎ話
春を恋う魚

丸い空と鳥
四角い部屋と魚
名前をなくした青い鳥
嫉妬の狼、怠惰の兎
犠牲の羊を撃ち殺す
酸素を求める金魚
白いカラス
千の夜に歌う鳥
泣けない魚
羊の額

鳥の睫毛
犬の背中
猫の前足
孔雀の羽は夕日に燃える
金魚のきもち
トロピカルフィッシュ
絶頂アラクニド
蜘蛛だけが見ていた
迷い猫は煩悶する。
なわとびにゃんこ

青花トカゲ
砂糖水と揚羽蝶
ネオンテトラはかく語りき
不死鳥のまたたき
くらげとリボン
ひだまりにライオン
ラストフィッシュ
うぐいす一羽、冬に相果つ
従者のライオン
しかくいうさぎ

※アラクニド……クモ形綱の動物のこと
※相果つ(あひはつ)……死ぬこと


7月 21 2013

本文向け

路肩でひなたぼっこをしていたキジトラ猫が流暢な言葉で話し掛けてくるという非現実をどう受け止めるべきかわからず、彼は口をぽかんと開いたまぬけ面のまま意味もなく辺りを見回した。


とある灰色の午後、薄暗い窓辺に腰掛けたその男は落ちつかなげに生あくびを繰り返しつつ、さてこれは困ったことになったぞと考えていた。

その日訪れた朝はあまりにも穏やかで、目の前に広がる惨状さえなければ昨晩の狂騒は悪い夢かなにかだと思えただろう。

全員が固唾をのんで見守る中、闇よりも濃密な闇が、ぬらりとうごめく。その正体にいち早く気がついたのはAだった。

その夏の日、空は青く、木々は濃く茂り、生き急ぐ蝉が大きな声で鳴いていた。

潮を含んでべたつく風が東から吹き付けて、埠頭の端に佇む彼女の長い髪をもてあそぶ。

私は彼女が傾斜のきついブーツの踵を颯爽と鳴らして歩く姿が好きだった。

目覚めた瞬間に理解した。——ここは夢の中だ。

息が詰まるほどの熱気を立ち上らせるコンクリートの坂を、きみと歩いた夏のこと。

所在無く壁に視線を逃がす私の見ている前で、赤い時計の秒針が長針を追い越した。

私はつい一分前に彼女の唇から放たれた言葉に多少の安堵を見いだしていた。

冷え冷えとしたコンクリートの地面で雨が弾けた。

夜空は瞼の裏側よりも暗く、静謐で、その中に大きく誇らしげに浮かんだ満月が庭に青白い光を投げかけている。
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7月 21 2013

ホラー

かかげた心臓
屍肉と燃える爪
溶ける両腕
眼窩に雪
転げ落ちる頭蓋
回転木馬で轢死
首切りうさぎ
空虚な肺
赤い羽根の背中
引きずり出された胸の内

噛み千切っておくれ
打ち砕いて、この骨を
人喰いの丘
腐敗の水際
切り落とされた踵
隙間から視ている
眼球にフォーク
縦並びの眼


7月 21 2013

ホラーな予感がする23題

チェーンソーと鬼ごっこ
ハロウィンの夜とナイフ
鉈と伸ばした右手
真夜中のテレビと砂嵐
セックスとドラッグと風紀委員
ボイラー室と悪夢
雪山で金貨を拾いました
井戸の底と呼び声
遊泳禁止、真夜中の湖
私・オブ・ザ・デッド

目が覚めたら箱の中
つぎはぎだらけのおともだち
2001人目の狂人
霧の中から御出でるもの
子羊の叫喚
血まみれゴルフ場
暗闇食らう妖精
かぼちゃ頭がやってくる
ブラッディ・メアリー
23年に一度の謝肉祭

優しい包帯男
覆い隠せば隠すほど、僕は怪物になっていく
ディナーはチェーンソーの唸りと共に

既存のホラー映画をモチーフにしています


7月 19 2013

いろいろ3

3月33日、雨。
とは言え地球は丸い。
不可思議な訪問者
完璧な五月とは
落下地点はまだ見えない
掌に残った爪の跡
愛情オーバードーズ
好きだと言ってみたら思わぬ結果になった
ナンセンス・センテンス
残り一枚になったカレンダーと、果たせないままの予定

明かりがないと眠れないVS真っ暗じゃないと眠れない
毛布にくるまって、折り重なる暗闇のセロファンをただひたすらに数えた夜
ただ一人のためだけに寄り添い、守り、存在する
顔のない夢魔は言った、
瞬き一度の間に変わってしまう世界など
それはそう、この身を切り崩して与えるような恋だった。
獣であればこそ
恋慕に似たこの感情の、しかし決定的に恋とは違うところ
寡黙に語る
初恋は実らないなんて嘘だった

8月31日のやくそく
昨日の境界線を飛び越える
誰も知らない宇宙
花運ぶ使者の足音を聞きながら
まどろむ夕暮れは遠い昔
恋の側面
そして私はこの手を差し出すでしょう
きっと自分たちが思うほどに上手には生きていけないだろうけれど。
そんな欲望なんて噛み砕いてあげる
nildesperandum

夜明けのしずく
Moonstruck
I BEG YOU!
フォリ・ア・ドゥ
撥条仕掛けの少女は眠らない
慰みを必要としていたのは、きっと、
最後に笑うのは獣だけ
ヴァルプルギスの夜が明ける
かがり火は燃え尽きた
ユグドラシルの木の実をたべた。

駄目な言葉だけが胸にわだかまって
神の眷属である事を選べばこそ
知っているけど素知らぬふりで。
くだらないこと、みっつめ。
口癖感染
白く凍る指先
乾いたささやき
夢魔の独白
くずれた硝子細工
秘密に沈む

※nildesperandum……ラテン語で『絶望するなかれ』
※Moonstruck……『月の輝く夜に』あるいは(月光が狂気をもたらすという信仰から)『気の触れた』『狂気』
※I BEG YOU!……すがるようなニュアンスで『お願い!』
※フォリ・ア・ドゥ……感応精神病のこと。妄想を抱いたAから、Aと親密な結びつきのある健常者Bへと妄想が感染する現象を表す。